■授業とパートナー

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  「さぁて、迂濶に間合いをとっても良いのかな?」 ラスターはハッとした。 逃げられない大きさを展開する深紅の魔方陣が、自分を囲んでいたことに。 「――燃え上がれ」 カインの詠唱が響き渡る。   今から逃げるのは間に合わない。   そう判断したラスターは、息を大きく吸い込み、目や口を閉じて防御に徹した。 「――デフェール!」 その瞬間、周囲で炎のマナが膨れ上がり、爆発的に噴き上がった。 凄まじい炎の量が、ラスターを喰らい尽くすように呑み込んだ。 「ラスター! ……詠唱が早い……」 驚嘆を隠せずに、リリスは叫んだ。 アミティエは肩をすくめ、答えを返した。 「火を使った中級魔法だね。やっぱりカインは早いなぁ」 上級魔法には及ばないが、中級魔法でも大量の魔力を消費してしまう。   なにより詠唱に時間を消費するため、剣士には向かないはずだ。 それを高速で放つカインに、リリスは驚嘆を隠せなかった。 学園の制服には特殊な魔法のコーディングがあり、一定の魔法なら身を守ってくれる。 しかし、痛い、熱いといった精神的なダメージは受ける。 それでもラスターは何とか耐えていた。 消えていく炎の中、焼けた草の臭いを纏っていた。 「……がぁ…っ!」 しかし、ダメージが大きかったのか崩れるように膝をついた。 外傷は無いのだが、耐えるためにかなりの力を消費したようだ。 「大丈夫か?」 「……凄いですね」 「ラスターも、状況把握能力は良かったよ。あそこで逃げれば直撃だったね」 ラスターはそれを考えてゾッとした。 自分の力を振り絞って耐えたはずなのに、あの威力だ。――直撃したのならば、と。 「さて、そろそろ終わりかな?」 「……俺の本気を見せますよ!」 カインの言葉に、ラスターが返したのは否定だった。 力を絞って、ラスターは不適に微笑むと詠唱に入った。
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