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「さて、疲れただろ? 今日はこれで終わり」
その言葉に二人は安堵した。
夕焼け色の空が黒く塗りつぶされていく頃だった。
「あ、今更だけど。これからは学生寮とは別に、俺の家で住んでもらうからね。四人で」
「え……?」
カインの言葉に、ラスターとリリスは同時に言った。
当然の反応だ。急に言われたのだから。
「大丈夫大丈夫、部屋も別けてるし広いよ」
「……いや、そういう問題では……」
アミティエの言葉に、ラスターは訝しげに答えた。リリスも困っているように見える。
だが、最終的にはカインの言葉に二人も丸め込まれた。
その説得が終わり、完全に夜の空になっていた時――
「んじゃま、家に行く前に温泉に行こうか!」
その瞬間、アミティエが怒気を含めた眼でカインを見た。
引き吊った笑みでカインは、慌てて手をぶんぶんと振っている。
その瞳には、殺気が孕んでいた。
アミティエの視線は、カインを真正面から捉えたまま微動だにしなかった。
カインは必死に「ほら、汗かいたしね?」と、冷や汗混じりに説得している。
しかし、ラスターとリリスは全く気付かずに、温泉かぁ、と嬉しそうに呟いていた。
二人は温泉というのを知ってはいたが、見たことがなかったからだ。
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