■温泉

4/9

42229人が本棚に入れています
本棚に追加
/709ページ
  「そろそろ上がるかい?」 「そうですねぇー」 カインはそう言うと湯船から足を上げた。 頭にのせていたタオルを手に取り、ラスター立ち上がる。 ――その時。 『胸が大きいですね……、羨ましいです!』 『リリスちゃん可愛い~!』 と、二人の声がしきりの向こうから聞こえた。しきりは、よくある木の板一枚のみ。 周りには岩があり、それが上手く形どって登ることができそうだ。 「カイン先輩……なにやってるんですか? 女湯とのしきりの前に……」 「愚問だな」 「まっ、まさかっ!!」 「行くぞ。ラスター」 「ちょっと待ってください! 犯罪ですよ!」 血相かえて叫んだラスターは、頬を朱に染めて女湯とのしきりに立っているカインを睨んだ。 「バカっ! 聞こえるだろう! ……ラスター、まさか君はこれが犯罪だと思っているのかい?」 すぅ、とカインの目付きが変わる。 その表情は真剣そのもので、普段のヘラヘラとした様子は全くなかった。 ラスターは犯罪と分かりつつ、その威圧感に戸惑ってしまった。 この隙をカインは見逃さない。 真面目な声色で言葉を紡いだ。
/709ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42229人が本棚に入れています
本棚に追加