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「そろそろ上がるかい?」
「そうですねぇー」
カインはそう言うと湯船から足を上げた。
頭にのせていたタオルを手に取り、ラスター立ち上がる。
――その時。
『胸が大きいですね……、羨ましいです!』
『リリスちゃん可愛い~!』
と、二人の声がしきりの向こうから聞こえた。しきりは、よくある木の板一枚のみ。
周りには岩があり、それが上手く形どって登ることができそうだ。
「カイン先輩……なにやってるんですか? 女湯とのしきりの前に……」
「愚問だな」
「まっ、まさかっ!!」
「行くぞ。ラスター」
「ちょっと待ってください! 犯罪ですよ!」
血相かえて叫んだラスターは、頬を朱に染めて女湯とのしきりに立っているカインを睨んだ。
「バカっ! 聞こえるだろう! ……ラスター、まさか君はこれが犯罪だと思っているのかい?」
すぅ、とカインの目付きが変わる。
その表情は真剣そのもので、普段のヘラヘラとした様子は全くなかった。
ラスターは犯罪と分かりつつ、その威圧感に戸惑ってしまった。
この隙をカインは見逃さない。
真面目な声色で言葉を紡いだ。
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