■温泉

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  「ラスター。逝ってこい。下は任せな」 「はい!」 そう言ってカインは握った拳の親指を立て、ラスターそれに応える。 ゴツゴツとしているが、ヌメヌメと滑るた岩を慎重に登っていく。 後少しで秘境に辿りつける、そんな期待に胸が高鳴っていた。 しかしその瞬間、勢いよくしきりが崩れ出した。 突然の出来事に体勢を崩したラスターは、地面と手痛いキスをしてしまった。 うぅ、と顔面をさすりながら起き上がる。 しかし目の前には、鬼が……いや、鬼神が仁王立ちしていた。 恐怖……、違う。 言葉という簡単な方法で表現できない。 全感覚が脳に訴えかけている。 ――全力で逃げろと。 しかし体が動こうとしない、動けない。 どう願っても、なにを想っても……動かない。 幸い口だけは動いた。 全ての希望を、たった一言に込めた。 「か…、カイン……!」 しかし、後ろには誰も居なかった。
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