42229人が本棚に入れています
本棚に追加
/709ページ
「ラスター。逝ってこい。下は任せな」
「はい!」
そう言ってカインは握った拳の親指を立て、ラスターそれに応える。
ゴツゴツとしているが、ヌメヌメと滑るた岩を慎重に登っていく。
後少しで秘境に辿りつける、そんな期待に胸が高鳴っていた。
しかしその瞬間、勢いよくしきりが崩れ出した。
突然の出来事に体勢を崩したラスターは、地面と手痛いキスをしてしまった。
うぅ、と顔面をさすりながら起き上がる。
しかし目の前には、鬼が……いや、鬼神が仁王立ちしていた。
恐怖……、違う。
言葉という簡単な方法で表現できない。
全感覚が脳に訴えかけている。
――全力で逃げろと。
しかし体が動こうとしない、動けない。
どう願っても、なにを想っても……動かない。
幸い口だけは動いた。
全ての希望を、たった一言に込めた。
「か…、カイン……!」
しかし、後ろには誰も居なかった。
最初のコメントを投稿しよう!