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「いいお湯だったね。リリスちゃん」
「はい、最高でした!」
濡れた髪をタオルで拭きながら頬を上気させて、風呂から出てきたリリスとアミティエが言った。
一方、男の方は、
「ラスター、大丈夫かい……」
「昔の風景をもう一度見れました……」
「それ走馬灯……」
その姿は入ったときよりも疲れはてていて、傷も増している。
そんな二人の方にリリスとアミティエが振り返ると、二人はビクッと肩を震わせた。
「カイン、早く家に行こうよ」
「ラスターも早く早く」
「了解しました!」
女性二人の裏のない笑顔に、男性二人は同時に応えた。
もちろん、逆らわずに。
四人が温泉の外へ出てしばらく歩くと、カインだけが立ち止って小さく呟いた。
風がカインの黒髪を揺らし、赤く光る右目を覆っている。
「……あの感覚……やっぱりラスター。君がガイアの――」
その呟きはとても小さくて、誰にも聞こえることは無かった。
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