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四人はリビングの椅子に座っていた。
テーブルには、甘い香りを漂わせる紅茶とお菓子が置かれている。
「さて、明日から特訓を始めるんだけど、学園内大会について話そうかな」
ラスターは頷く。
一方、リリスはアミティエに「これ美味しいんだよー」とお菓子を薦められていた。
「……ごほんっ」
カインはわざと咳払いをし、二人もそれに気付いて慌てながら耳を傾けた。
「まず、大会は学園全体が参加するからね。一年生から四年生の480人が参加することになる」
王立学園(アカデミー)は各学年120名が在席している。
留年制度は特に無いが、成績があまりに低いものは騎士にも行けないため、一般職を学歴だけで合格する者もいるそうだ。
「予選リーグは乱戦で、A~Lブロックまである。そのブロックの上位二名のみが決勝リーグ。だね」
その説明にラスターとリリスは目を見開いた。
つまり12ブロックに分け、1ブロックが40人。
更に30人は自分より上級生、という計算になる。
とてもじゃないが上級生に勝てる訳が無い、と二人は思っていた。
現にそれを証明されたのだ。
「まぁ地形も変わるからね。平原だったり森だったりさ。だから戦略で勝つことも可能だよ」
地形はとても重要である。
例えば、ラスターのような接近戦が得意ならば平地は有利だが、魔工学科のリリス達にとっては障害物のある方が有利である。
だが戦力でどうになかなるような問題ではないはずだ。
「それより、上級生に勝つなんて……」
「ふふっ、大丈夫だって。毎年何人かの下級生は決勝リーグに行ってるからね。やっぱ重要なのは戦略よ」
アミティエが、ラスターの不安を打ち消すように答えた。
それを追求するように、リリスが口を開いた。
「去年は何人が行ったんですか?」
「確か、3人だったかな」
「少ないです……」
リリスは肩を落として頭を項垂れた。
そんなうなだれた様子を見ながら、カインは明るい声色で励ますのだが。
「でも大丈夫、二人ならいけるさ!」
根拠がない。
カインの励ましも虚しく、二人は既に溜め息をついて落胆していた。
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