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ラスターが時計を見ると朝の8時を回っていた。
完全に目が覚めたとはいえ、緑の広がるこの草原を見ていると目が痛いようだ。
ラスターは目を瞑っている。
「とりあえず、実戦経験を豊富に入れようと思ってるんだ」
朝陽に当たる艶やかな黒い髪を風に揺らしながら、カインは言った。
「なぁカイン、俺は戦術と魔法を習いたい」
「……すいません、私は実戦はちょっと苦手です」
「魔法も戦術も、実戦経験を積めば自然とわかるよ。リリスはサポートがつくから大丈夫。ね?」
「ね?」を強めて言われたため、二人は素直に頷いた。
二人は、カインにも考えがあるんだろう、と自身を納得させていた。
「さて、まずはソレイヤの森に行こう」
「ちょっと待った!」
歩み始めるカインに向かって、焦ったようにラスターが叫んだ。
カインは不思議そうに振り向いた。
「ソレイヤの森って…モンスターがうじゃうじゃ居るはずじゃ!」
ラスターが反論するのも無理はない。
ソレイヤの森は、近年モンスターの増加で有名になったのだ。
それは正規の軍隊すらも悩ませるほどに。
しかも、ギガンティスと言う巨大なモンスターも確認されている。
しかし、それでもカインは微笑んでいた。
「強くなるには、これが一番だ。ね?」
続けて、アミティエが眠そうな顔を手で擦りながら言った。
「いざとなれば、私達がいるからね」
ラスターとリリスは過信しすぎだとも思えた。
正規の軍隊が頭を悩ませる森に、学生が四人だけで行くのだから。
それなのに、なぜだろうか。
ラスターとリリスは【この二人がいれば大丈夫】と、異常なまでの安心感を持っていた。
不思議な安心感。
信用ならない感覚に戸惑いもあるが、今は先輩に命を預けることにした。
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