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濃い緑の臭いと木々に包まれながら、ラスターは歩いていた。
――……1人で。
「おーい! みんなどこだよ……!!」
思い虚しく、ラスターの叫び声は森の中に吸い込まれていった。
不気味にも魔物の気配はなく、森の中は静けさが漂っている。
ラスターは、仲間達とはぐれてしまった。
そして、森の中を歩き回っているが出口すら見つからないままだ。
「みんなー……」
段々とラスターの声が弱まっていく。
魔物に見つかるのも危険だと感じ、ラスターは叫ぶのを自重していた。
それからしばらく歩くと、木でできたアーチが見えた。
あそこなら目立ちやすいかもしれない!
そこに向かって歩くのだが――ラスターは足を止めた。
「ギ……ギガンティス」
そこにはモンスターでも極めて好戦的なギガンティスがいた。
その巨大な体躯の向こうには、動物か、果たして人間のものなのか、多くの骨が落ちている。
それを見た途端、ラスターは凍りつくような寒気を感じた。
心臓が高鳴り、この場から離れようと震える体を動かす。
しかし、その時、目の前に合った金属の塊――折れた剣の一部を蹴ってしまい、金属音が響き渡った。
「しまっ――」
「ッ!!」
完全に見つかった。
弾かれたように振り向いたギガンティスは、重そうな足を動かして近づこうとしている。
噛み締めた歯の隙間から、荒い息が漏れている。
ラスターを喰らう気かもしれない。
その時、ラスターは脱兎の如く走り出していた。
しかし歩幅の問題もあり、距離を引き離せない。
いや、歩幅以前に足が震えているからだ。
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