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低い茂みを駆け抜け、小枝や落ち葉を踏み分けていく。
梢の先で体が引っ掻かれ、生傷が増える。
しかし、今は気にしている場合じゃない。
「カイン! リリスゥゥゥゥ!」
叫んでから、ラスターは無駄に酸素を使ったと後悔した。
その叫びは、やはり深い緑の中に吸い込まれていく。
「あっ!」
その時、小石を踏んづけてバランスを崩した。
バランスを保とうにも足が震えていたため、無情にも地面を転がった。
その一瞬の隙に、ギガンティスは本能的に拳を振り上げた。
その瞬間、ギカンティスの拳が地面に叩きつけられた。
微かに揺れた地面と、粘土のようにめり込んだ土に、ラスターの姿はない。
横を転がっていた。
そして、瞬時に立ち上がって剣を抜く。形だけの虚勢をとった。
(どうする…!このまま走っても…)
走っていれば追い付かれるかもしれないし、ひたすら体力を消費するばかりだ。
ラスターは腹をくくって剣の柄を握りしめると、詠唱を始めた。
――【バースト】
一時的に身体能力を上昇させる技術で、ラスターの得意な技の一つだ。
「ウガァァァァァァァァァァァアッ!!」
それに呼応したように、ギカンティスは狂ったように咆哮した。
その迫力に、握っている剣がカタカタと震え始める。
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