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「二人だけの特訓、さ」
「二人だけ? なんで?」
「君とリリスは、まだ成長段階だからね。ひとまず20日間くらいは、各自で特訓しようって話になったんだ」
「へぇー。てことは後の10日間は合同でやるのか」
「そういうこと」
カインは頷くと、ラスターに近づいた。
その手には、背中の大剣とは別に剣が握られている。
「これをあげる」
握られていた剣をラスターに差し出し、疑問に思いながらもラスターは受け取った。
見るからに高級そうで、赤い刀身が炎のように波を打ち、柄には細かな装飾もある。
重量がありそうだが、持ってみると手に馴染み、軽かった。
「なんか…高そうだけど…良いの?」
「いいよ。おさがりだし。俺って元々、普通の長さの剣を使ってたんだ」
「ありがとう。大切にする!」
フッとカインは微笑んだ。
――ああ、ラスターは敬語になっていないことに気づいてないんだな、と。
だが、カインも咎めるつもりはなかった。
「さぁて、早速特訓しようか」
「え? いや、俺は怪我人……」
「大丈夫さ、勉強なら。まずは基礎学習からね」
その後、幾度となくラスターはため息を漏らし、稀に悲痛な叫びを発することになった。
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