■学園内大会予選

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  アナウンスが響き渡ると同時に、選手は武器を構えた。 便乗するようにリリスも銃を構えている。 その場から動かずに周囲に気を配る者、なるべく離れようとする者、動きはそれぞれだ。 リリスは銃を構え、弓や銃の遠距離武器に対して警戒を強めていた。 そして、 『試合――開始!』 それと同時に、リリスは銃口を空に向け――引き金を引いた。   まるで自殺行為。 自分はここにいると証明したようなもの。 当然のように集まってくる人々を前にして、リリスは動かなかった。 約六人。いくら速射を狙おうと、間に合うかもわからない数だ。 幸いにも――いや、確かめた通り、集まってくるのは剣や槍などの接近武器。 リリスはそれを見ると、心の中でガッツポーズをした。 「お願い、成功して……!」 リリスのとった行動は、胸の前で手を組み、お祈り。 それはリリスを狙おうとする六人にとって、哀願しているようにも見えた。 しかし、それはお願いのような――詠唱。 その瞬間、硝煙を漂わす銃口の真上に魔方陣が浮かび上がっている。 その大きさは、接近していた6人を呑み込んでいる。 本能的に回避しようとする者や、詠唱を中断させようとする者も居た。 しかし、 「――ハイドロリックッ!」 その魔法陣から、大量の水流が真っ直ぐに落ちてきた。 重力に逆らうことのない水は、六人を押しつぶすように襲っていく。 リリスのいるところにだけは穴があるが、当然、少しの水は浴びていた。 その頃、観客席から歓声が沸きあがっていた。 「中級魔法か? 何年だ?」 「名簿には一年生って……」 「一年生!? 一年生で中級魔法かよ……!」 「あれ、術式はいつ書いたんだ?」 「かわいい……」 そういったリリスについての批評を聞いて、アミティエはニヤニヤと笑っていた。 「銃弾に術式を付加させたのか」 「正解ー」 「付加か。アミティエに似てるね」
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