■学園内大会予選

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  「よしっ!いくぞっ!」 ラスターはある選手に狙いを定めると、木々の中を駆け抜けた。 そして心の中で、特訓のことを復習していた。 (カインの言ったことを思い出せ!) 「おっ。お前一年生か?」 駆け抜けた先に、槍を持った男がいる。 標的発見、なんてな。   ラスターは口先を歪めていた。 「悪いな! 先輩として……んっ!?」 男が言い終わる前に、ラスターの姿が消失した。 ――カインとの特訓の一つ。 長所であるスピードの特化。 「ちいっ! 火の精よ、我が手に宿れ!」 男が詠唱すると、小さな火球が手に宿っていた。 ボール程度の大きさだけれど、当たれば動きは止まってしまうだろう。 「――フレア!」 投球された小さな火球が、ラスターの消えたと思われる位置で燃え盛った。 それが木々を燃え移り、小さい範囲が露になる。 「いない……」 それでも、ラスターの姿は無かった。 逃げたか。男がそう踵を返そうとした瞬間―― 「よっと!」 後から聞こえた声に反応できず、男は強制的に意識を手放された。 後ろには、剣の柄で、頭に強打を放ったラスターの姿がある。 「やっぱカインは早いんだな。この人が遅く見えた…」 カインなら、今のにカウンターを添えてくれるだろう。 そうして余韻に浸るラスターを、マナの集る感覚が襲った。 ラスターがいち早く気付いて、上空を見ると、赤の魔方陣が空にあちこち描かれていた。 「あれは……、炎魔法!」 瞬間的に危険と判断した。 幸い、マナが集まってる最中なのを見れば、発動はまだなのだろう。
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