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建物の影から影を縫うように、ラスターとシオンは駆けて行った。
常に周囲を警戒し、二人が止まるときは背中を合わせる約束だ。
「角度30の方向に二人居るな」
「どうしてわかったんですか?」
「その部分だけマナが微弱に揺れている。警戒しすぎているんだろうな」
シオンの言葉に、ラスターは感心したように頷く。
――原理はわからないけれど、凄い。
そして、やはり凄い人なんだという尊敬の心が沸きあがった。
「よし、相手の気を逸らすから、その隙に一人を頼む」
「はい……!」
囮になるのだろうか?
シオンは、相手と建物の瓦礫を挟む位置に移動した。
一方、ラスターは建物の上に。
(……なにするんだろう)
真下にいる相手選手を見つめながら――
「行くぞ。はあっ!」
――ぶっ飛ばされた。
「は? え、えぇぇぇぇぇえ!?」
文字通り、ラスターは吹っ飛んだ。
後ろには、さっきまで足場にしていた建物が一緒に崩壊している。
空中を浮遊しながら、ラスターの視界には、拳を構えるシオンの姿が映った。
「ああっ……あの人、パンチで建物をぶっ壊したのか」
……ありえない。ありえないぞーッ!
建物が崩壊する轟音に、ラスターの絶叫はかき消されていた。
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