■学園内大会本選

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  元々大きな建物があったのだろうか。 全てが壊され、瓦礫の中を二つの影が駆け抜けている。 「リディアさん、どうしましょうか」 駆け抜けながら少女――リリスが言った。 「はう、ちょっと前線にですぎちゃった」 もう一人の少女、リディアは申し訳なさそうに呟いた。 その後方には、巨大な鎌を持つ男が追ってきている。 「奇襲作戦により我の意表をついたのは見事! しかぁし!このカロルには通用せぬ!」 黒い鎧に身を固め、禍々しい雰囲気の斧を持っていた。 少女二人を追う男からは犯罪臭がする。 時折、リリスが銃を放ちつつ攻撃するが、全てその鎌に弾かれていた。 「リリス、召喚術は使えそう?」 「召喚術は集中が必要なので……厳しいです」 リリスが申し訳なさそうに俯くと、リディアは「じゃあ」と明るい声色で言った。 「じゃあリリス、私が魔法を詠唱するから……おさえてくれる?」 「だ、大丈夫ですか? 多分、あの人はリディア先輩を真っ先に……」 「先輩だから! 大丈夫! リリスのほうが気をつけてね」 「わ、わかりました……」 有無を言わさない言葉には、先輩だから、が一番に強調されていた。 リリスは申し訳なさそうに逆方向、つまりカロルの方に向かって駆け出す。 「ぬうっ?」 カロルはそれを見て立ち止まると、鎌を地面に突き立てて笑う。    「我と対峙しようとは…その勇気はよし! しかぁし! 我は女性を傷つけるのは心許ない。故に降参を要請する!」 「紳士ですね」 笑顔で言うリリスに、カロルは少したじろいだ。 「と、ともかく! どうするのだ!」 「闘います!」 そう言ったリリスは短剣を眼前に差し出すように構えた。
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