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しかし、相手二人の意識はすぐに回復した。
それどころか、元気になっていく。
「大丈夫? 回復魔法をかけたわ」
レイナの慈愛に満ちた表情が、二人に向けられる。
意識が回復したばかりの男は寝ぼけていたのか、その姿が、まるで天使のように見えてしまった。
「……敵なのに、……ありが」
ドッゴーン。
そんな擬音が似合うかのように、男の頭に雷が落ちた。
そして、回復。
「おっ……ぐ、あ……お前……まさか……?」
「大丈夫かしら?」
――無限ループ。
その後、幾度となく悲痛な叫びが廃墟に木霊した。
それを笑顔で見ているアルスも、何度も回復するレイナも、やはり悪魔なんだろう。
「満身創痍かもしれませんが、一応、自慢させて頂きますね」
アルスはゆっくりとした口調で、言葉を紡ぐ。
「私は魔法のみを専攻していまして、魔法だけならば学園1とも言われます。それで付いた呼称が」
レイナの魔法を受けては回復を繰り返す敵の二人は、薄れゆく意識の中、アルスを見た。
アルスは上弦の月を思わせるような笑みを向けていた。
「強力無比たる魔法から、《最恐》と。……まぁ、賢者と言われた方が嬉しいんですがね」
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