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カロルは何度も体を動かそうとした。
しかし、体が震えるだけで動くことができない。
「なんだ……これは……!」
「少しの時間だけ相手の動きを止めれるんです。……私も止まりますけどね」
自嘲するように笑うリリスに、カロンは目を剥いた。
幼い声で紡がれる詠唱は、佳境に入っている。
「――潰れてもらうから!」
緑色の魔方陣が、カロンの真下に浮かんだ。
そして徐々に輝きを放ちながら、風のマナが集っていく。
「く……くそぉ!」
カロルは必死に逃げようとするが、すでに遅かった。
しかし、数瞬の後、リリスが飛びのいた。
緑色の光が拡散すると――
「エアロプレッス!」
魔方陣を中心に、膨大な圧力が襲い掛かる。
地面に縫い付けられるようにして、ガロンは押しつぶされた。
「ぬぐぉぁぁぁあああああああっ!」
凄まじい圧力に、立ち上がることすらできない。
咆哮が途切れた後、ガロンはその場に倒れ込んだ。
完全に沈黙――。
それを確認して、リリスとリディアはお互いに微笑み、パンっと手を打ち合わせた。
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