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剣を突きつけたエイテルが、微笑を浮かべている。
そのレイピアから、螺旋をえがいた炎が放たれてシオンを襲ったのだ。
「っ……降参させようとしたんだけどな」
「焔よ、無数の矢となりて敵を射て」
エイテルの詠唱が響き渡る。
マナが瞬時に集まり、瓦礫の中に埋もれるシオンを目掛けて、
「喰らいなさい。フレアアロー」
矢の形をした炎が、シオンを貫こうと放たれた。
炎の尾を引きながら、迷うことなく一直線に伸びていく。
炎の矢がシオンの目先に届いた瞬間――爆発した。
「あはっ♪終わりね♪」
エイテルはレイピアを鞘に戻し、ラスター達の方へ向き直る。
「貴方達のリーダーは負けた。イコール、チームの敗北ね」
「……ああ、リーダーの負けだな」
それを聞いたラスターは笑っていた。
エイテルは眉根を寄せたが。
「油断大敵ってね」
エイテルの後ろに立っていたシオンが、左手の手刀で首を小突いた。
エイテルから、あっ、という呻きが漏れる。
しかし、糸が切れた人形のように、あっさりとエイテルの体が崩れ落ちた。
そして――
『試合終了! Cチームの勝利です』
ああ、強い。圧倒的に強い。
シオンを見つめながら、ラスターは光悦とした表情をしていた。
圧倒的な強さを見せた男に、素直に驚嘆し、憧れている。
ただ、それだけだった。
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