日常的描写

10/17
前へ
/69ページ
次へ
    「お前は壊れてる時の方がいい。普段はウザい」 「それ酷くないですか?」 「真実を言ったまでだ」 「…………」 ……そういやこの人はこういう人だったな。 私はそんなことを考えながら、彼から目線を逸した。 「機械が思い詰めたような顔してんじゃねぇよ……」 「……菊池さん?」 「なんでもない、気にするな」 冷たく言い放たれた言葉。 そんな言い方しなくても良いのに……。 「琴」 ふてくされる私に湊が声をかける。 「おいで」 優しい笑顔。 「今度から出かける時は帽子か日傘を持っていくこと」 「はい」 「あと、勝手に何処かに行かないこと」 「はい」 私の返事を聞いて、湊はまた微笑を浮かべた。 「ん、いい子」 湊の細くて綺麗な手が私の頭を撫でた。 温かい。 「で、雪代先生? 俺忙しいんで今日はもう帰っていいですか?」 私と湊の背後から不機嫌そうな声が響く。 「ああっ、今日は本当すみません!」 ペコペコと頭を下げる湊の姿に、私はなんとなく笑ってしまった。    
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加