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「お前は壊れてる時の方がいい。普段はウザい」
「それ酷くないですか?」
「真実を言ったまでだ」
「…………」
……そういやこの人はこういう人だったな。
私はそんなことを考えながら、彼から目線を逸した。
「機械が思い詰めたような顔してんじゃねぇよ……」
「……菊池さん?」
「なんでもない、気にするな」
冷たく言い放たれた言葉。
そんな言い方しなくても良いのに……。
「琴」
ふてくされる私に湊が声をかける。
「おいで」
優しい笑顔。
「今度から出かける時は帽子か日傘を持っていくこと」
「はい」
「あと、勝手に何処かに行かないこと」
「はい」
私の返事を聞いて、湊はまた微笑を浮かべた。
「ん、いい子」
湊の細くて綺麗な手が私の頭を撫でた。
温かい。
「で、雪代先生? 俺忙しいんで今日はもう帰っていいですか?」
私と湊の背後から不機嫌そうな声が響く。
「ああっ、今日は本当すみません!」
ペコペコと頭を下げる湊の姿に、私はなんとなく笑ってしまった。
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