日常的描写

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    太陽の光が眩しい。 瞼を開けると、眼前に立ち並ぶ高層ビル。 その合間から覗く青空が、なんだかとても遠くに感じられた。 「快晴……」 ここは倭光国(ワコウコク)中央都市、翠鳴都(スイメイト)。 首都というだけあって、この国の中で最も発達した都市である。 そして、気が付けば自分は、公園に一人で突っ立っていた。 「私、なんでここにいるんだろう?」 公園のど真ん中で独り考えた。 ふと噴水の水面に写る自分を見やると、肩より少し上で整えられた黒髪が揺れている。 今日は風が強い。 「……何も分からない」 見覚えのある公園。 都心に買い物へいく時にいつも休憩する場所だった。 腕にしっかりと抱えられた紙袋の中にはパンや野菜などの食料。 「買い物に来たんだっけ?」 記憶を巡らしても何も掴めない。 それ以前に、今は自分の名前すらも思い出せないでいる。 「どうしよう……」 そうやって途方に暮れていると、背後から足音が聞こえてきた。 小さな足音が、段々と大きくなっていく。 「……?」 「うわぁっ!?」 誰かの叫び声と同時に、何かが散らばる音が背後に響く。 ……転んだ?    
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