日常的描写

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    「ゴメン、困らせちゃったね」 そう言って私の頭をぐしゃりと撫でた。 「琴は……特別だよ?」 「本当?」 彼は優しくほほ笑むと私を抱き寄せた。 「……なんせ雪代京弥の最高傑作なんだから」 消えてしまいそうな程小さな声は。 聞き取ることが出来ないまま無くなってしまった。 「電脳地下街東町ー!電脳地下街東町ー!」 車内に響くアナウンス。 「東町に着いたみたいだ、降りよう」 湊の言葉に、私はゆっくりと腰を上げた。 到着したのは、電脳地下街東町(デンノウチカガイヒガシマチ)。 電脳地下街は、人工太陽に照らされ地上とはまた違った雰囲気で活気付く地下都市。 その中でも東町にはこの国で最も大きな機械工業市場がある。 毎日がお祭のように賑やかな町。 「雪代先生!! またパーツ買ってくかい!?」 「いえ、また今度お願いします」 「雪代先生、ウチんとこの機械人形の調整またお願いできっかぁ?」 「ええ、勿論です」 驚いた。 機械工業市場の人がみんな湊に声をかける。 私は目を丸くして、隣を歩く湊の顔を見つめた。 「人気者なのね」 「まあ、ぼちぼち」 困ったように微笑む湊。 「賑やか……」 私はいつも湊とここを歩いていたのかな? 記憶が曖昧だ。    
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