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先程おばぁさんが現れた障子戸のすぐ向こうは、居間となっていて、私達はそこに通された。
もっとも、私だけは台所に連れてかれ、昼食の準備を手伝っている。
いや、正しくは、手伝わされている。
ちゃぶだいを囲み、談笑を行なう三人組に、ちらりと目を向けた。
あの後、鳩尾の辺りに食らったおばぁさんの拳により、少年は帰還。
本人が言うには、ショック療法らしいが…
私にだって、それがなんの医学的根拠もない、ということぐらいはわかる。
半泣きで「死んだジイちゃんに、連れてかれそうになった!」などと訴える少年は、あまりに哀れだった。
しかし、彼らにとっては日常茶飯事のようだ。
現に、すでに少年はすっかり回復していた。
「よそ見すんじゃないよ!ったく、使えない小娘だねぇ。火はこのババが見とくから、できたもんからとっとと運びな!」
使えない。
トロい。
遅い。
今日だけで、ざっと一年分くらいは連呼されている。
「はぁい、はい…」
そもそもなんで私が!?
返事にも、そんな気持ちが露骨に表れる。
「ハイは短く一回だよ!小娘!」
「ハイッ!」
さっきから、こんな調子だ。
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