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ゴツンッッッッ!
…
…
…
痛い。
頭部を襲った衝撃を我慢しながら、うっすらと目を開けてみる。
差し込んでくる光。
いつもの電車だった。
ガタン、ゴトンと規則正しい揺れを刻みながら、走っている最中だ。
どうやら、相当深い居眠りをしていたようだ。
座席からずり落ち、頭を打ち、こうして目覚めたというところか。
何か、恐い夢を見ていたような気もするけど…
思い出せない。
まぁいいか。
そんなもんだ。
夢なんて。
そんなことよりも、気にすべきことは。
他の乗客からの、イタイ視線だ。
これでも一応、16歳の女の子。
人並み以上に、恥ずかしいと思う気持ちは強い。
―全く、最近の若い娘は…
―見ろよ。必死に取り繕ってるぜ…
―ママー!あのお姉ちゃん、よだれのあとー!
そんな声が聞こえてくるようだ。
いたたまれなくなって、思わず近場の停車駅で降りてしまった。
うつむきがちに、そそくさと定期を取出し、改札へ向かう。
乗り過ごしたわけではない。
定期券の区間内だったため、乗り降りは自由だ。
まぁ…
先程の赤ッ恥の後では、救いにすらならないが。
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