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入り口でうろうろしていても、何も始まらない。
とりあえず、中に入らなければ。
そう思い、戸に手をかけてみるものの…
開かない。
立て付けが悪いのか?
異物が挟まってるのか?
とにかく、目の前の戸はびくともしない。
もう一度、今度は目一杯力をこめて挑戦してみる。
「んーーーーッ…」
すると、戸はあっけなく開いてしまった。
その勢いのまま、体は後方へとバランスを崩し、派手に尻餅をついてしまう。
ドシンッッ
豪快な音に、戸のガラス張りがビリビリ響く。
「いッッ…たぁーい…」
痛むお尻をさすりながら立ち上がり、お店の中に目を向ける。
これだけの騒音だ。
中の人から、怒鳴り声を食らっても文句は言えない。
しかし、だ。
店内は相変わらずシンとしている。
多少は不審に思いながらも、とりあえず中に入ってみようか。
何しろ、さっきまであれほど手強い相手だった入り口の戸は、もはや解放状態。
まるで「いらっしゃいませ」と、言わんばかりだ。
でもこれって、無断で侵入?
そんな考えをねじ伏せ、店内へと一歩を踏み入れた。
「お邪魔しまーす…」
形だけの挨拶だった。
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