方向転換。

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方向転換。

沈黙だけが、2人の距離を支配した。 しょうは何を思ってるんだろう。 何を考えてるんだろう。 ずっと黙ったまま、海を見つめていた。 「…ごめんな」 沈黙に身を任せていると、しょうが突然、謝った。 「え?!何が!?」 「人口呼吸…」 …? 何言ってんの? 私助けて貰ったんだよ? 「キス…奪っちまった。あの時は焦って何も考えてなかったけど…後々考えると…」 「なーんだ!そんなこと!」 私はとたんにしょうが可愛いく見えて笑ってしまった。 「こちらこそ有難う、しょう君がいなかったら私、死んでたかも!」 笑ってそう言うと、しょうはとたんに悲しそうな顔を見せた。 「死んでたかも、なんて考えたくもない。」 もっともだ。 「ごめん…。」 また、2人の間に沈黙が流れた。 他の音は聞こえ無い。 ただ、沈黙の音だけ。 「なぁ」 「ねぇ」 2人同時に声が漏れた。 「「何?」」 「先に…」 「お先に…」 「「あっはっは!」」 これは笑ってしまった。2人して腹を抱えて笑った。 こう何度も何度も言葉が被ると、もう何を言おうとしたかすらも忘れた。 「あ、あやちゃん…」 「しょ、しょう君…」 「「気が合うね!」」 「ぶっ…」 「ククク…」 生ぬるい夏の風が2人を包んだ。 「あやちゃん、あのさ、前にも言ったけど…」 「私ね、好きな人が居るの。 おっちょこちょいでね 照れ屋でね 時々可愛いくて 優しい人。」 しょうの言葉を遮り、私は言った。 「なおきだろ?良いよ、なおき好きでも。俺の方に向かせるから。」 バレたのは別に問題じゃない。 ワザと解るように言った。 「私は、なおきが好き。」 「俺は、あやちゃんが好き。」 見つめ合う2人の間に、気まずさはなかった。 ただ、真っ直ぐな瞳と瞳が、喧嘩した。 「うまくいかないねっ!恋愛って!」 「いくよ。」 「私、12年間も片思いするようなしぶとい女だよ?」 「俺、頑張るから。そんな一途な所も好きになった理由。」 顔から火がでそうになって、思わず俯いた。
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