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なおきからあやの話を聞いてから、よく、2人であやを見つけては、つまづいただの、転んだだの言い合い、2人して笑い転げた。
「あいつほんっと危なっかしい」
ケラケラと笑いながらなおきは言う。
俺は最初、背の低い方が危なっかしいと思った。
人は見かけによらない物だな。
「でもさ!あいつちょっとおっちょこちょいだし、男みてぇだけど、たまに女の子なんだな、って思う。」
なおきが言った。
「へぇ、どんなとこ?」
俺はなおきに言う。
「あいつ、良い匂いがするんだよね!不意に優しかったり、時々可愛いって思ってしまう。あいつすんげぇ照れ屋だから言わないけど。」
少し恥ずかしいのか、なおきは俯いて言った。
「ま!腐れ縁だしな!あいつ泣かす奴いたら俺がぶん殴ってやる!」
なおきは右手の拳を左手にパシパシと叩いた。
なおきはあやが好きなのかもしれないな。
でも聞く気も無い。
なおき自身も、凄い照れ屋だ。
2人のことはそっとしておこう。
俺には幼なじみっていうのが居ないから、どうゆう感覚でなおきがあやを見てるのかは解らない。
だけどなおきの口からはチラホラと「昨日あや、ベッドから落ちたらしいぜ」とか「昨日あやが高島屋のことたかまし屋とか素で言うから笑いが止まらなかった」だとか、色んな「あや」が見え隠れした。
「なおきー」
俺がはじめてあやを間近で見たのはこの日だった。
「また振られたのかー」
なおきは窓際で叫ぶ。
告白でもしたのかな?
「チャリんとこで待っろよ!すぐ行くから」
「解ったー」
想像していた「あや」は、予想以上に綺麗で、俺はびっくりした。
この綺麗なあやが、そんなにそそっかしいとは、想像も出来なかった。
「ゆうが先帰っちまったんだって」
なおきが言った。
「ゆう?」
「いつもあやの隣に居る背の低い」
「あぁ!」
「あやの彼女」
なおきは悪戯に笑う。
「あいつらいつも2ケツで学校来るから、ゆうに振られた時、俺、足変わりに使われんの。可哀想だろ」
ケラケラと笑いながらなおきは言った。
楽しそうに見えるのは俺だけなんだろうか。
「じゃ!行くわ!」
「おぉ!」
あやと幼なじみのなおきが、凄く羨ましく思えた日だった。
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