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それからの俺は、窓際を陣取っては、あやを探すのに躍起になった。
ある日、あやが見当たらないのを確認してから、なおきとプロレスの話で盛り上がり、俺は丁度なおきの首もとをしとめ、腕に力を込めていた。
「なおきー」
不意に聞こえた、聞き覚えのある声に、俺の耳は反応した。
声と同時に緩んだ腕の隙間から、なおきはするりと抜け出し、「何?」と言いながら、ドアに寄りかかるあやの方へと行った。
「ゆうがあんたのこと好きなんだって!!」
何を喋っているのか解らなかったけど、そこだけが、何故か強い口調で、窓際に居る俺の耳にも入ってきた。
なおきは、なんて返事したんだろう…
それだけが気になった。
もし断っていたら…
やっぱりあやが好きって事なんだろうか…。
「ゆうが俺ん事好きなんだってよ」
ニヤニヤしながらなおきは戻ってきた。
「聞こえた。
で?」
「あとで俺、告白しに行かなくっちゃ♪」
意気揚々となおきは言う。
「何が「行かなくっちゃ♪」だ。あやちゃんは?」
「あや?あやが何?」
「いや。別に」
「何だこの!」
今度はなおきが首を絞めてきた。
「さてはお前、あやに気があるな?」
ニヤニヤと笑っているんだろう。
俺は必死になってなおきの腕から抜け出そうとした。
「そんなんじゃ無いって!」
俺は必死に抵抗する。
「薄情しろ!」
なおきの腕が更に食い込む
「解った!解ったから…っ」
そう言うとなおきの腕がスルリとほどけた。
「綺麗な子だなって。それだけ」
「ふぅ~ん」
なおきのニヤニヤは止まらなかった。
俺は、あやに、恋をした。
ただそれだけ。
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