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「夏だー!!!!」
「海だー!!!!」
なおきとゆうは叫んだ。あやをさっきから見ていたけど、ずっと気分が悪そうだった。
飛行機の階段を降りる時なんかは、見てられなくて、思わず手が出て、俺はあやを支える。
「ホテルへーレッツゴー!!」
そんなあやに気付かないのか、ゆうはいつものように盛り上がる。
「あやちゃん、大丈夫?」
「あや、顔色悪いぞ」
後ろから支えていて顔は見えなかったけど「大丈夫、」と言うあやの声は実に弱々しかった。
「ゆうー」
先々歩いて行くゆうを引き止める為、なおきがゆうを呼ぶ。
「あやちゃん、行こうか」
俺はあやの手を引き、ゆうのもとへと歩き始めた。
少し前に居るなおきから、「空気読めよなー」と舌打ちと同時に、小さく聞こえた。
ゆうの事を言ってるんだろう。
ゆうとなおきは、ほんとに上手くやってるんだろうか。
やっとのことで着いたホテルは、思っていたよりデカかった。
「だー!!!!疲れたー」
「なーに言ってんの!行こうよ!海!」
ゆうのこの小さな体にどこにそんな元気があるんだろう。
「ちょ、煙草吸わして…」
「あ、あたしも…っ」
あやの顔色もだいぶマシにはなってきたが、まだ休憩が必要だ。
「みんなだらしないなー」
「まぁ、お前も座れや」
「はーい」
なおきは、ゆうの教育係ってとこだろうか。
なおきの口からゆうの話題が出てこないのも不思議じゃないな、と思った。
「見てて飽きないのはあやに勝る奴はいねぇ」その通りだ。
「やーっぱ綺麗だね!海!」
そうあやが言いだした時、「な、言ったろ?」とでも言わんばかりになおきは俺を見た。
笑いそうになるのを必死にこらえ、「きれいだな!」と何とか言いきった。
「休憩!もういいでしょ!着替えようよ!」
「だな」
「「うん」」
あやと俺は話すテンポが似てるのかな。
よく言葉がかぶる。
ゆうが水着で登場した時には3人そろって笑い転げた。
派手なオレンジ色がピカピカと輝いて、「ゆうちゃん、何目指してんの」と息も途切れ途切れにそう言った。
ゆうのご機嫌は斜めになったようだが、ビーチに付くと、「海ー!」と叫びながら飛び込んで行った。
あやは落ち着いていて、砂利の上に座っていた。
俺はあやの隣に腰掛けた。
時々押し寄せる潮が足をくすぶって気持ち良い。
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