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激しいめまいも無くなり、しょうになだめられながら涙も止まった頃、私としょうは浮き輪を膨らまし、沖合へとぷかぷか流されて行った。
なおきとゆうは、2人でビーチボールで遊びだした。
私達は、ハシャぐ事もなく、ただ気ままな浮き輪に身を任せて、ぷかぷかと浮いていた。
「ねぇ。」
私はしょうに話しかけた。
「んー?」
「今付き合ったら、あたし、しょう君をとことん利用するよ。なおきを忘れる為に逃げ道にしょう君を使うよ。」
本音だった。
なおきを忘れる為。利用する。
しょうに失礼な事、いっぱいすると思う。
「忘れる為にドンドン使ってくれ」
と、しょうは言った。
しょうの気持ちが解らない。
「他の男見てる奴と付き合って楽しいの?」
「それを仕留めた時の快感ったらもう!」
ニーと無邪気に笑うしょうの笑顔に、少し気分が和らいだ。
「そろそろ戻ろっか。だいぶ流されちまった」
「そだね」
浮き輪を陣取っている私を、浮き輪越しにしょうはバタ足を始めた。
静かな、静かな、バタ足だった。
「なおきはやたら水しぶきあげるのに」
「俺はなおきよりおしとやかだもーん」
ケラケラと笑いが漏れた。
だいぶと進んで、やっと浅瀬に着いた頃、もう夕日が出ていた。
「なおきー!ゆうー!」
まだバシャバシャと遊んでいるなおきとゆうを呼んだ。
「帰ろー!!」
「「解ったー!」」
と、遠くから2人の声が聞こえた。
ホテルに着いた頃にはみんな疲れ果てていた。ゆうでさえ、「疲れたね」と言う始末だ。
ホテルの部屋は、4人用の、座敷にしてもらった。「なおきもあやも一緒に寝るのー」とゆうが言いだしたからだ。
ゆうはなおきが居るのに、同時に、私も欲した。
学校に行く時も、帰る時も、いつも3人居ないとダメらしい。
私が、なおきを好きでなかったら、純粋に「可愛い」と思えるのだが、2人を揃って見るのが苦痛な今、ゆうが私を欲する事に意味はあるのか、と、純粋には喜べないでいた。
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