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俺たちの地元はそれほど田舎でもないが、決して大きくもない。
それをあいつは嫌っていた。
どうせならもっと大きなところに行きたい。
まぁ、どうせそんなことを言っていたところで、現実の荒波に飲み込まれて終わるんだろう。
そんなことを心の中で思っていた。
だが、実際は違った。
あいつはIT企業でもう部長にまで昇進していた。
25歳という年齢を考えればかなり早いらしい。
今は何億と言う金を動かす小学生だって存在するんだぞ。
そんな負け惜しみを考えたものの、虚しさが増しただけだった。
そのときアナウンスが流れて、ゆっくりと電車がホームに入り、
扉が開く音が聞こえた。
そのとき、
「なな……」
誰かの呟くような声が、微かに聞こえた。
その声が気になってみてみると、さっきの女の人が丁度ドアから出て行ったところだった。
「なな?7のことか?一体何のことだ?」
少し気になったけど、とにかく彼女が出て行ったことで、俺はようやく首を前に向けることが出来た。
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