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ドアが閉まるのを確かめてから、俺はまた手すりに寄りかかった。
俺は未だに平社員。
彰浩はこの先重役の職まで用意されているとさえ言われていた。
その上今度の結婚だ。
相手の容姿が悪ければ、俺の心も少しは救われたのかも知れない。
だが、結果は残念なものだった。
悔しいけどすごく綺麗な女の人だった。
さらさらとした長い髪、黒目がちな大きな瞳に、すらっとした体。
気がつくと、俺はため息をついていた。
自分でも気づかないほど、俺は本当に疲れているみたいだ。
しかたない少しでも体の疲れを癒すために、少し寝ることにしよう。
俺は静かに目を閉じた……。
電車の揺れる感覚と、ガタンガタンという規則正しい音が聞こえてくる。
まだ寝てはいないみたいだ。
そう思ったとき、誰かが話しかけてきた。
「ずいぶんと疲れているようだね」
誰だろう?
男の人の声に思えた。
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