心の傷

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チャックの部分が少し開いていたらしく、中の物が出てしまった。 飛び出てきた手帳を中に入れようと、鞄を開いてみたとき違和感に気づいた。 いつもならあるはずのものがない。 何だ? 何がない? だけど、この嫌な感覚はかなり重要なものらしい。 そして、ドアが閉まるときのベルの音で俺は気づいた。 そうだ携帯だ。 暇になると携帯をいじる癖のある俺は、電車に乗るときはいじらないようにいつも鞄の中に入れていた。 それがないんだ。 そう思ったとき、俺の体は締まりかけるドアに向かって突進していた。 ぎりぎりセーフ、どうにか抜け出すことが出来た。 ホームに立って息を整えているとき、ふと赤ちゃんの乗ったベビーカーが、電車のドアにはさまれて引きずられたと言うニュースを思い出した。 息が整ってきた俺は、ベンチに腰掛けた。 何でさっき何の迷いもなく、ドアに向かって突進したんだろう? 素朴な疑問だった。 完璧に危険だと言う感覚は消えていた。
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