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白髪とは少し違う、透き通る様な透明に近い不思議な髪を揺らす少女。
少女は色鮮やかな着流しの着物の裾を擦って市丸に近付き、その小さな手を差し出した。
「…市丸様、宜しければ"夢"を御覧になってみませんか…?」
「…"夢"って…そないな言葉、遊女の子が誘う時使うヤツ…」
幼子の口から発せられた遊女の誘い文句、それを軽く受け流そうとした言葉は、喉元で止まる
「…お選び下さい。"来ますか""来ませんか"」
落ち着いた声色。
その刹那、言葉を紡いだ少女は数刻前の幼さが残る少女では無かった。
「何やのんなぁ…遊郭言うんはこないに小さな子ぉにまで、色着けてまうんかな」
色っぽいと言うのか艷めいたと言うのか、少し垂れた目を気持ち細めたその視線には、幼子と分かっていても目を反らせない何かがあった。
「……お相手は私ではございません、私の主人でございます。」
「やろうね、君はまだ遊女なれるん先やもんな。
―――…ええよ、君にそない上手な色事教えたご主人、会うてみよか。案内してくれはります?小さな遊女サン」
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