黄昏を臨む丘

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「運命の女神たち(ノルニル)から未来を聞いたらしい。それとも自分で視たのかもね。フェンリルは凶暴どころか、常に監視されていたことに文句一つ言わなかった。それどころか、生かされていることに感謝すらしていたよ」 「どうして……お前はフェンリルに会ったことないはずじゃ……」  他ならぬ絶対神(オーディン)がロキとその子どもたちとが会うことを禁じたのだ。ロキに手を貸す者などいなかっただろう。いくら頭の回転が速いロキでも、さすがに一人で監視の目をごまかしてフェンリルと会うのは不可能だ。 「テュールがね、一度だけ会わせてくれたんだ」 「テュールが?」  彼のことは人づて程度にしか知らないが、確かフェンリルに腕を噛み千切られたという元司法神だ。腕がなくなったために司法神の座を息子に譲ったのだと聞いたことがある。 「でも、テュールはフェンリルを恨んで――」 「フェンリルの監視役がテュールだったんだ。鎖に繋がれる前に、あの子の世話をしてくれてた」  ロキは懐かしむように目を細めて空を見上げた。だが、そんな表情が浮かんだのも一瞬で、またあの歪んだ笑みを浮かべた。
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