黄昏を臨む丘

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「これは復讐だ」  ロキの冷たい声が闇に響いた。その何も写さない瞳には、怒りの炎が静かに燃えている。 「だからホズを使ってバルドルを殺させた。あの時オーディンが何をしたのか、君も覚えているだろう?何のためらいもなくホズの処刑を命じた。しかも自分の息子(ヴァーリ)にね。一番出来のいい子が一番出来の悪い子を殺されたからって、普通あそこまで簡単に自分の子どもを、ましてや腹違いとはいえ兄を殺させるなんて出来ないよ。あれがオーディンの本性だ」  ロキはせせら笑いを浮かべてトールに背を向けた。 「行くな、ロキ」  トールは思わず彼を呼び止めた。ロキは振り返ったが、その顔には相変わらず嘲笑が浮かんでいる。 「光の神を殺した罪で、僕をしょっぴく気かい?」  ロキはそう言っていつものように茶化したが、その眼は笑っていない。トールも真剣な面持ちで彼との距離を詰めた。
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