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旅をする時にいつも待ち合わせしていた所に、ロキはいた。
「どうしてだ」
トールはロキに向かって低く唸った。
ずっと彼だけは違うと思っていた。生まれは巨人族でも、心は自分たちと共にあるのだと。だから、彼のことを本当に信じられる親友だと思っていた。けれども
「オレたちを裏切るのか……?」
声が震えていた。
ついこの間まで一緒に笑いあっていたはずの彼に、こんなことを尋ねなければならないことが、トールの喉を塞いでいた。
「答えろよ、ロキ!」
トールの叫びに、ずっと背を向けていたロキがようやく振り返った。彼の整った顔からは感情というものが読み取れないほど冷たい。
「裏切るわけじゃないさ」
その表情とは裏腹に、ロキの声音はいつもと同じだ。だがその瞳は暗く、すべてを拒絶するかのように蒼く濁っている。
「ならどうして……どうしてバルドルを殺した!」
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