黄昏を臨む丘

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 トールはロキの襟元を掴んで激しく揺さぶった。それでもロキは表情を変えず、その瞳はいまだに冷たいままだ。 「どうしてバルドルを……異母弟(おとうと)を……」  自分のことは二の次で、いつも誰かのためにしか動かないようなヤツだった。それ故に皆から愛され、ロキにもよく懐いていた。なのに何故、彼は殺されなければならなかったというのだ。 「殺したのは僕じゃない。ホズだよ」 「お前がやらせたんだろうが!」  ホズは目が見えなかった。それを利用して、ロキは彼に実の兄であるバルドルを弓で射殺させたのだ。 「どうしてあんなことをしたんだ。最近のお前、なんか変だぞ!」 「本当に分からないのかい?」  その言葉が合図だったかのように、突如ロキの様子が豹変した。その声には怒りを孕み、何の感情も浮かんでいなかった顔にも怒りがにじみ出ている。 「僕はすべてを奪われた。他ならぬ、君の親愛なる父上様にね」  皮肉るような口調べ吐き捨てたロキの顔には、狂ったような笑みが張り付いていた。トールが思わず怯むと、その隙にロキは彼の腕を振りほどいた。
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