黄昏を臨む丘

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ロキの噛み締めた唇から一筋の赤い滴が伝う。それはまるで、彼の涙のようだ。 「確かにアース神族(君たち)にとっては仕方ないことだよね。たとえ僕にとっては愛しい子どもたちでも、お前たちにとっては怪物でしかない。ヘルは体の半分が腐っているし、ヨルムンガンドは猛毒を持った巨蛇で、フェンリルも巨狼だ。 それでも最初は割り切っていたさ。この世界で暮らす限り、他者を傷つける者は管理されても仕方がないと。フェンリルを鎖で繋いだ、本当の理由を知るまではね」 「本当の、理由……?」  フェンリルが鎖で繋がれたのは、その巨大な体躯と凶暴な性格から、危険分子として判断されたからだと聞いていた。子狼の頃は監視だけだったこともあり、ずっとそれを信じてきた。しかし、それが嘘だというのか。  トールが困惑した目でロキを見ると、彼はニヤリと顔を歪めた。 「フェンリルがいつか、オーディンを殺す存在だからだよ」  そう言って笑ったロキは、今まで友人だと思っていた彼とは別人のようだった。
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