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「社長自らわざわざこんな所に現れるとはな」
オレは冷やかしと嫌み込めて呟いた。
「でもまさか社長が登場するとは予想外だった・・・・」
「デスクは側近に託しているから、わたしは日頃こうして部下達と視線を同じにしているの」
ヘレンズはエレナを見て微笑を浮かべる。
「ねえ、エレナ」
「監視の間違いじゃないですか?」
エレナの無表情にも突っ込んだ言葉に、ヘレンズは目をパチクリとさせて、
「そうですね」
呆れた笑みを浮かべる。それはしょうがないなと言う諦めの表情だ。
二人の会話を聞いているとき、オレはエレナの言葉が変化していることに驚いていた。
こいつが敬語を使っている
思わず吹き出しそうになって顔がほころぶ。
「何がおかしいのグレース?」
「いや、気にするな」
オレは小さく咳払いをして、サングラスの真ん中をクイっと押し上げる。話をうまくごまかされたエレナは視線を一瞬細めてから、大きくため息をついた。
「噂どおりの人ですね」
その様子を見ていたヘレンズはにっこりと笑みをこぼす。オレは意味が分からず眉根を寄せる。
「オレがか? 誰に噂を聞いてるんだ」
「もちろんエレナですよ。沈着冷静で、それでいてたまにぼけるところがあって、まとめ役のグレースさん。そして、自分勝手で、短気で、単純で、でも戦闘においての能力は絶品のアーレスさん」
ヘレンズは口元に微笑をたたえながらそう言った。いい意味で評価をしているみたいだった。
オレの噂はともかく、アーレスは凄い言われようだな。いいところがないぞ。
「ほほう、喧嘩を売っているようだな」
さんざんなことを言われているアーレスはなるほどなっと軽く頷きながら腕を組み、威嚇を噴くんだ視線をエレナにぶつける。
また、始まるのか?
そう思っていると、どうやら今回はそうでもなさそうだった。
「そんなことは一言も言ってませんが」
エレナはアーレスの睨みを気にも止めてないように無視する。しかし、さすがのエレナもヘレンズの言葉に機嫌を損ねているようだった。その口調はいつにも増して堅い。
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