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「あら、そうだったかしら?」 この二人のやりとりも見ていたヘレンズは、顔がにやけていながらも小首を傾げてとぼけたように運ばれてきた紅茶を一口飲んだ。 その間も憮然としてエレナを睨み付けていたアーレスは、唐突にその対象をヘレンズに変えた。 「おい貴様、世間話に来たわけじゃないだろ? いいかげんに現れた理由を言えよ」 せっかくヘレンズが現れたおかげで和やかになりかけていた空気をアーレスが完全にぶち壊す。 お前には状況ってもんが分からないのか? まあ、分かるはずもないか こいつに敬語など無縁だろう。大会社の社長を前にしても遠慮することをしらない。 「ヘレンズだったか? 偶然にしては虫が良すぎるぜ?」 その問いかけに、ヘレンズは手に持っていたカップをテーブルに置き、静かに表情を消す。 その毅然とした態度の中には、先程までの優しいイメージは微塵もなくなっている。あるのは、それは彼女がゼネラル・リソースのトップである威厳が感じられる。 「まずはあなた達に依頼した仕事内容の訂正からさせてもらうわ」 「そんなことはどうでもいい。手っ取り早く目的をはけといっている」 そんな彼女の裏表のある性格を目の辺りにしても、終始機嫌の悪いアーレスは、ヘレンズへ今にも襲いかかりそうな程の睨みをやめない。 「教会で殺したテロリストの奴らは間違いなく訓練を受けた動きだった。そんじょそこらのテロリストじゃないはずだ。いや、そのテロリストというのも妖しいもんだな。狙ってるにしちゃ後手に回っていたような気もする。どうなんだ、え?」 その言葉を淡々と聞いていたヘレンズは、素晴らしい、とばかりに感嘆のため息をついた。 「とてもよい観察力をお持ちですね。そしてその推理力も群を抜いているわ」 「今更褒めたところでうれしくもない」 ヘレンズの褒め言葉もアーレスは軽く払いのけ、追求の視線をやめない。 「・・・・・・いいでしょう」 その視線に耐えかねたわけではないだろうが、しばらく黙り込んでいたヘレンズは口を開いた。
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