プロローグ

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世の中にはやはりいろんな奴がいる。 それを個性と一概に言ってしまえば簡単だか、この男だけはその個性云々では語れないものが多々ある。 たとえばそうだな。 そのいかれたファッションセンスだろうか・・・。 全身を黒一色でまとめたその姿は誰が見ても怪しいことこの上ない。本人いわく、季節外れのロングコートは武器を隠すのにうってつけだし、色を統一することでいろんな効果が得られるらしい・・・・・・。 そして独特の思考回路から紡ぎだされるセリフもこの男特有だろう。 「死ぬ前に存分に苦しんで逝け」 肩口に振り下ろされた剣を銃の腹で弾き返し、相手の首筋の、即死ではないにしろ必ず死ねるであろう位置に銃口を向け、アーレスは静かに言い放った。 吠える銃声。上がる血飛沫。撃ち抜かれた男は衝撃に錐もみしながら後ろへ吹き飛ぶ。 喉をやられ動脈を裂かれた男はそこから血の噴水を上げながら苦しさにもがきはじめる。 「終わったぞ」 リボルバー式の銃のシリンダーに弾をリロードしながらアーレスは気怠そうに言った。 オレはその言葉に少し誤りがあるのを、嫌みにも似た風に問い返す。 「まだ死んでないぞ」 「助かりもせんがな」 面白くなさそう言ってアーレスはまだもがいている男の姿を見下ろした。 その横顔には微かな微笑がたたえられている。それは死に逝く人間に対してあまりにも残酷な笑みだ。 まったく、このひん曲がった性格は一体どこでどうやって生まれるんだか。それさえなければこの男のルックス、実力ともにそうはいない。オレの所属する傭兵組合〈ユークス〉にでも加入ればすぐに上級ランツの【キャリア】まで上り詰めるであろう。 しかし本人はこれでも考古学者と語っている。
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