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城塞都市ブリッツェンには様々な企業の本社が軒を連ねている。オレの所属する傭兵組合もそうだが、エレナの勤めるゼネラル・リソースもここに拠点を置いている。
都市中央には領主レオナルドの居城があり、その周囲をはびこる貴族どもの邸宅が取り囲んでいる。
経済状況はまあ普通だろうか。良いところは良いし悪いところは悪い。ちなみに傭兵組合はこのかた不況を知らない。人材も増える一方で規制するほどだ。
どうやら『傭兵』と言うフレーズが若者の心を刺激するらしく志願者は後を絶たない。
オレの場合は、これが一番好き勝手に金が手に入るから加入したまでのことだ。
金が無くなれば仕事を受け、報酬は日頃の生活に何ら支障は出ない程度に使えばいいからな。しかし、この何ら支障のでない報酬をもらうためにはやはり〈ランツ〉の中でも上級にランクするしかない。〈ランツ〉の階級は細かく分類され、最下級のEから始まりAまでくると、上級ランツ、通称『キャリア』のA2、 A3、A4、A5と続き最上級のS3、S2,Sと区分けされる。
初めの頃はリスクの高い仕事を受け続けて手っ取り早くオレは『キャリア』の〈A2〉に仲間入りした。あとはぎりぎりの線を保ってそこに留まっている。昇格しすぎると、今度は逆指名が起用されとんでもない依頼を受けさせられるときがあるからだ。だからオレは昇格の話が持ち上がってくるといつもさぼって先送 りにしている。
おかげでついたあだ名が『フェイク』だ。
「待たせたわね」
「別に待ったって程でもないがな」
行きつけのカフェの窓から見える風景を眺めていたオレは、前の椅子に腰を下ろしたエレナに視線を移した。彼女は近くにいたウェイトレスにアイスカモミールティを頼むと、おもむろに懐へ手を突っ込む。
「今回の報酬よ」
「ああ、だがなんでまたオレになんか依頼したんだ?」
テーブルの上に差し出された小切手を受け取りながら、オレは腑に落ちない顔をする。金額的にも申し分ないのだが、どうもすんなりと喜べなかったからだ。
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