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「こんな大役、オレじゃなくてもSクラスの奴らにでも頼めばもっと楽に出来たろうに。たとえば最近有名な『ブラッディ・ルーア』なんか適任だろう」
「そうね、でも数字だけが事実とも限らないじゃない、それにパートナーとしてやりやすいわ」
そう言って、ふいにエレナはオレの瞳を見つめてくる。その視線は何となく笑っているようだった。
「あと、最近地方でブラッディの異名を持つ人が出てきて従来の二つ名が霞んで気にしてるルーアが聞いたらなんて言うかしらね。確かブラッディ・エ・・・」
「そんなことは今関係ないだろ?」
割り込んで話を区切り憮然とするオレをよそに、エレナは運ばれてきたティーカップを上品に手に取りゆっくりと唇へ運んだ。その様子をオレはずっと眼で追っていた。
エレナとはちょっとした馴染みでもある。アーレスに比べるとこっちの方が付き合いは長い。むしろアーレスとは最近と言った方が正しいだろう。
「あと、少しあなたの相棒に興味もあるの」
意味深げなことを言いながらエレナはティーカップをソーサーに置き、視線をカウンターの隅に向けた。そこには、近寄りがたい波動を撒き散らしながら、昼間っから酒をあおっているアーレスがいた。その背中を細めた瞳で見つめながらエレナは不敵な笑みを浮かべる。
「いい腕をしているわ彼は、傭兵になればすぐにキャリアを越えるでしょうね」
「だろうな、一体どんな人生送ってきたんだか」
オレもアーレスの背中を見ながら呆れたため息をつく。
きっと、ろくな人生を歩んでないはずだ。さすがにああはなりたくはないな
「何をじろじろ見ている」
オレ達の視線が気になったのか、アーレスはむっとしながらこちらに振り返る。
「オレの背中になにかあるのか?」
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