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「レオンお兄ちゃんがおかわりする分まで食べちゃダメだよ!」
「なんだよ!レオンの皿には、みんなよりたくさん盛ってあったじゃんか」
すかさずカイトが言い返す。そりゃあレオンは高校生だから、子供たちより食べる量は多い。
「だいたいお前は、常にレオンレオンレオンだ!」
そう言われて、エイヴィアは顔を赤らめた。もともと肌が白いだけに、紅潮するのが分かりやすく、恥ずかしがっているのが見て取れる。
「まあまあ2人とも。楽しい食事なんだから、仲良く食べようね」
レオンはゆっくりとした口調で、2人を宥めるように言った。
エイヴィアはまだ真っ赤な顔のまま頷き、カイトの方はいつの間にか2杯目にがっついていた。彼の食い意地は、ある意味尊敬に値する。
なかなか愉快な食卓の団欒に、レオンは自然と心が温まるのを感じた。ザグレダに帰ってきてから1人で食事する生活を送っていたので、たくさんの笑顔と向かい合っての夕食は新鮮であり、どこか懐かしくもあった。
レオンもそろそろ2杯目をおかわりしようとした時、とても不思議なことが起こった。
あれほど食の鬼と化してブイヤベースを漁っていたカイトが、突然、スイッチが切れたオモチャのように、ピタッと手を止めたのだ。
「ど、どうしたの、カイト?」
完全に静止した少年に、レオンは心配そうに尋ねた。
すると、カイトは目を見開いて、口に残っていたブイヤベースの具を飲み込み、ゆっくりと言葉を絞り出していった。
「……レオン、聞こえた?」
「え?」
唐突な問いに、レオンもフリーズした。
「聞こえたんだ。誰かが呼んでる……」
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