暴君咆哮

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「各自の判断で射て!」  怒声のようなフィリップの指示が飛ぶ。  同時に、2頭目のチーターが地を蹴った。  鉄の刄を持つ稲妻が、前後から挟み撃ちを仕掛けてくる。これには、並外れた動体視力を持つフィリップも面食らった。  兵士たちに銃を構える暇すら与えず、2頭のチーターは、瞬時に獲物の首元を掻き切っていく。まるで殺しを調教されているかのような、鮮やかな戦い方だった。  いや、それよりも異常なのは、こいつらの凶暴さだ。野生に生きるチーターは、足の速い小型動物を狩る為に俊足を発揮するハンターだ。だが、この個体どもは、超スピードを殺戮の為にだけ行使しているようにさえ伺える。まるで、闘争本能だけの戦闘マシーンのようだった。  不利な状況を悟り、フィリップはは次なる指示を下した。 「横の通路にずれて、態勢を建て直せ!」  止むを得ない選択だった。正規ルート上の進路で戦っていても、両サイドからなぶられて大きなダメージを被るだけだ。 「了解!」  サブマシンガンとハンドガンで敵を牽制しながら、スカイプレデターはT字路の横に伸びる――先程1頭目のチーターが立っていた通路へと駆け込んでいく。 「射て射て射て射てぇ!」  危機感を言葉に乗せて、フィリップは叫びまくった。  兵士たちが、それに応じて各々銃口を敵に向ける。  だが――。  突然、ものすごい音を立てて、目の前に壁が下りてきた。通路と通路を遮る、重金属製のシャッターが閉まったのだ。
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