暴君咆哮

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「なんだと!?」  フィリップは驚き、当惑した。  チーターたちと隔離されたことで確かに助かったのだが、安堵感はまったくなかった。明らかに、何者かが故意にシャッターを落としたとしか思えない。  突入時にコンピューターウイルスを侵入させてセキュリティを解除させたつもりだったが、施設の防御機能はまだ生きており、誰かの手でシャッターは閉められた。  だとしたら、自分たちの行動は常に監視されていたのか。それとも、この制圧作戦自体が筒抜けだったのだろうか。 「隊長、この施設は妙です。作戦を中止して撤退しましょう」  副官らしきアジア系の男が、フィリップに作戦の放棄を促した。 「俺も同じ考えだ」  フィリップは小さく頷き、ベルトに付けられていたサーバータイプの通信機を手に取った。  上の連中からは、いかなる犠牲を払ってでもリオス博士を救出せよと言われたが、このまま作戦を続行しても彼を助けられる見込みはない。最悪の場合、全滅もあり得る。ここは即刻ダークエンジェルと連絡をとって、潜水艦に帰還すべきだ。 「こちらスカイプレデター。ダークエンジェル、応答願う」  まったく返答はなく、電子的なノイズのみが流れている。 「ユーリィ、応えてくれ!」  通じない。何度やっても、結果は同じだった。 「畜生っ!ジャミングだ!」  研究所内には通信を妨害するジャミングウェーブが、それもかなりの出力で流されていた。これでは他チームだけでなく、潜水艦とも連絡がとれない。  フィリップは、サーバーを壊れるくらい強く握り締めた。
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