暴君咆哮

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「ここの位置は?」  腹立たしい態度を押し殺して、フィリップは副官の兵士に尋ねた。  兵士は手早くデヴァイスのナビゲートシステムを開き、現在地点をチェックした。 「エリアB-4の9番通路です」  フィリップは歯軋りした。作戦開始前の演習から、完璧にエリアマップを把握している彼にはすぐにわかった。  閉じ込められたのだと。  この通路に他のエリアに通じる道はなく、奥に物資運搬用のエレベーターがあるだけだ。エレベーターはゲートと同じく、IDがないと起動しない。セキュリティ突破に失敗したため、フィリップたちの手で動かすことはできないだろう。 (くそぉ……)  フィリップをはじめスカイプレデターの兵士たちがナーバスになりかけていた時、思わぬ出来事が起きた。  フィリップたちから30メートルほど遠くにある大型エレベーターが、ガラガラと音を立てて、ゆっくりと開き出したのだ。  兵士たちは一斉に反応し、銃を持って身構えた。 「隊長、これはいったい……」 「わからん。だが、決して良い展開ではないようだな」  金庫のようなドアを左右にスライドさせて、エレベーターは完全に開き切った。  誰も乗っていない。無人のエレベーターだ。まるで兵士たちを誘っているかのように、大口を開けたまま止まっている。  起動したタイミング的に考えて、これは確実に罠だと考えていいだろう。スカイプレデターの行動を監視し続けている何者かが、出口を失った兵士たちを手玉に取って遊んでいるに違いない。
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