暴君咆哮

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「あれに乗ってしまえば、敵の思う壺です。ここで耐え抜きましょう」  副官がフィリップに提案を立てた。  確かに、あのエレベーターに乗ることには、新たな脅威に晒される危険性がある。ここでじっとしているというのも、安全策のひとつなのかもしれない。  だが、フィリップは敢えて首を横に振った。 「どこにいようとも、我々が袋のネズミであることに違いはない。たとえここにいても、シャッターを開けられてしまえば、我々に生きる道はないだろう。そうなれば、我々が行く道はひとつしかない。罠かもしれんが、別な状況下に身を置くことで、突破口が開ける望みもある」  フィリップは冷静な口調で、隊員1人1人を諭すように言った。 「私に命を預けてくれ」  フィリップがそう言うと、兵士たちは黙って敬礼をした。先程の副官も懐柔したようだった。  戦場において指揮官は、冷静沈着かつ慎重であるべきだが、そればかりでは部下が不安に陥ることもある。ときには、身体ごとぶつかっていく大胆さが必要なのだ。 「総員、エレベーターに乗り込むぞ!」 「了解!」  フィリップを先頭にして、スカイプレデターはエレベーターへと歩み寄っていった。  どんな罠や危険が待ち構えていようとも、覚悟の上だ。無謀かもしれないが、他に道は残されていなかった。
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