暴君咆哮

21/23
前へ
/2816ページ
次へ
 フィリップ以下、スカイプレデターの兵士たちは前方から来ようとする脅威に敵対した。 「いいか、みんな!何が出てこようとも、臆せずに立ち向かえ!」 「了解!」  各員、緊迫感を押し殺して、目の前の戦いに集中する。  フィリップはサブマシンガンを放り投げ、背部のウェポンラックから、火力の高いアサルトライフルを引き抜いた。 『さあ行けっ!バーサークレックスよ!』  ギックルルスの高らかな声で、スピーカーが音割れした。  一瞬の沈黙。  重い静寂がドームに降りてくる。 (――!)  それを打ち破ったのは、割れた壁の穴の中から響いてきた爆音だった。  人工的な音ではない。獣の雄叫びだ。ライオンより重々しく、ワニよりも遠く響く鳴き声。  そのあまりの勢いに、屈強な兵士たちも大きくぐらついた。 「ゆ、油断するな!」  闘志を奮い立たせて、フィリップは両足で床をしっかりと踏みしめた。  生体兵器だろうと生物である以上、倒せないことはないはずだ。そう自分自身に言い聞かせ、ライフルを構え直す。  だが、開いた壁の闇のを脱ぎ捨てながら、光の空間に歩み出てきた者を見た時、兵士たちは戦慄することになる。  それは、人間が――否、すべての哺乳類が封じていた、太古から残る忌まわしき怪物への恐怖だった。  それが、時を経て甦った。人間が自らの手で、仇敵を呼び覚ましたのだ。
/2816ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3278人が本棚に入れています
本棚に追加