海の叫び

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「心配ないわよ」  リナはレオンにウインクしてみせた。 「西の外れの孤児院でしょ?ナサニエルの車をすっ飛ばして送り届けてあげるわよ」  ここに来て、少なくともリナが変人でないと分かったレオンは、胸の内で少しだけ安堵した。 「あのさぁ、博士」  コーヒーを一気飲みしたカイトは、唐突にリナに話し掛けた。 「さっきのオジサンは、ここの学者さんなんだよね。いったいどんな研究をしてるの?」  確かに、先程イルカに遊ばれていたザマからは、到底まっとうな科学者であることは想像できなかった。  少々訝しげに尋ねるカイトに、リナは微笑んで答える。 「海の生き物の暮らしや進化について調べてるの。あの人は生き物なら何でも詳しいけど、専門はサメね。サメの繁殖の仕方や個体数の調査をする一方で、絶滅する恐れのあるサメの保護活動も行ってるわ」 「保護活動?」  カイトとエイヴィアが同時に訝しげな顔になった。 「絶滅の危機に瀕してるサメって、そんなに多いんですか?」  飲みかけのコーヒーカップを置いて、レオンが尋ねた。 「ええ……例えば、そこの水槽の中にいるヨシキリザメがそうよ」  リナは顔を上げて、顎ですぐ側の水槽を差し示した。  その中には、全長2メートルほどの細長い身体をした、緑がかった青色のサメが泳いでいた。 「絶滅危惧種よ。その要因は、私たち人間」  リナの口調が、急に辛辣になった。
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