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「普通の人は、サメは海の殺し屋っていうイメージを抱いているようだけど、全ての生き物にとって、最も残虐な殺し屋は、私たち人間なのよ。サメだけじゃなく、数えきれないほど多くの生き物を滅ぼしてきて、そして今も、たくさんの生き物を滅ぼしつつある」
リナの語りは、レオンたちを越えて、全人類に突きつけられているようであった。
「あのオジサンはね、地球上の生き物を絶滅から救う為の研究をしているの。本当はとても立派な人なのよ」
張り詰めた表情を和らげて、リナは再びカイトに向き直った。
「…………」
カイトの脳裏では、人間の欲によって痛ましい死に方をしていくサメたちの姿が映し出されていた。ヒレを刄で切り取られて、海底に捨てられ、飢えて死んでいくサメたち。彼らに声があったら、どんな叫びを上げるだろうか。
乱獲、虐殺、絶滅……それらの言葉が、カイトの心を絶えず輪廻していた。
「ひとつ質問だけど、サメって危険な生き物なの?」
唐突に、エイヴィアが聞いてきた。
サメが悪役というイメージの強い彼女には、サメを擁護する人間が珍しく思えているのだ。
「それは人間の先入観。そして、メディアがサメを悪者に仕立て上げたせいで、そういうイメージが広く浸透しているのよ」
リナの目が、再び厳しくなった。
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